SpaceX Q3決算、AI部門が初の黒字に|売上は予想超え

SpaceX Q3決算、AI部門が初の黒字に
売上は予想を大きく上回った

赤字続きだったAI部門が営業黒字へ。会社は来期の売上も強気に見通した。株主の目線で、決算と気になる点を整理する。

SpaceXの7〜9月期決算は、サプライズだった。

売上は145.8億ドル(約2.3兆円)で、予想の127.2億ドルを大きく上回った。これまで赤字を出し続けてきたAI部門は、初めて営業黒字になった。4〜6月期は12.6億ドル(約1,986億円)の赤字だったのが、7〜9月期は4.31億ドル(約681億円)の黒字だ。会社全体の純利益も44億ドル(約6,960億円)の黒字になった。

市場の反応は、2日で大きく分かれた。決算翌日の10月21日は、株価が7.8%上がって159.31ドルになった。ところが22日は、ロックアップの解除やハイテク株全体の下落が重なり、9.1%下がって144.75ドルで終わった。それでもIPO価格の135ドルは上回っている。会社は来期の売上見通しも強気に示し、マスク氏はテスラとの合併協議を公式に認めた。

この記事では、まず良かった点を確認し、そのうえで気になる点を6つ整理する。結論を先に言えば、気になる点はあるが、黒字転換と来期の見通しという好材料のほうが大きいと筆者は考える。

目次

Ⅰ.SpaceXの決算は、売上も利益も予想を大きく超えた

結論から言うと、売上・営業利益・純利益のすべてで、市場の予想を上回った。

売上高145.8億ドル約2.3兆円。予想は127.2億ドル
営業利益27.9億ドル約4,410億円。予想は22.4億ドル
純利益44.0億ドル約6,960億円。予想は15.7億ドル

売上は前年同期(55.8億ドル)の約2.6倍。営業利益(本業の儲け)は、前年同期の2.7億ドルの赤字から、27.9億ドルの黒字になった。純利益は、前年同期の10.5億ドルの赤字から44億ドルの黒字へ、約55億ドル改善した。純利益が営業利益より大きいのは、本業以外の収益(その他の収益が約10.3億ドル、利息収入が支払利息を上回った分が約2億ドル)と、法人税の戻し(約3.9億ドル)が加わったためだ。本業の力は、営業利益で見るとよい。

株価は、決算発表直前の10月20日の終値147.79ドル(決算は取引終了後に発表)から、翌21日に159.31ドル(+7.8%)まで上がった。しかし22日は144.75ドル(-9.1%)で終わり、上げ幅を全部失った。出来高は約2億株で、直近3か月の平均(約1億株)の約2倍だった。IPO価格の135ドルは上回っており、上場後の安値104.83ドルからは約4割高い水準だ。

22日に下がった理由は、複数が重なっている。

  • ロックアップの解除:大株主の売却制限が、この日、最大約13億株分(約2,000億ドル相当)解除された。上場後で最大の規模だ
  • ハイテク株全体の売り:ナスダックは2.6%下がり、6月以来の下げ幅になった。Metaが約7%下がり、AI関連の投資負担と資金調達への不安が再燃した。原油が5か月ぶりの高値になったことも重なった
  • テスラの決算:テスラは利益が予想を上回ったが、2026年の設備投資計画を引き下げたことが嫌気され、株価は約3%下がった
  • 利益確定売りと合併報道:前日までの上昇分に対する利益確定売りが出た。さらにロイターが、マスク氏の合併支持の発言で協議が遅れかねないという関係者の懸念を報じた(Ⅴ章)

22日の下げは、SpaceX固有の悪材料というより、地合いの悪化と需給の要因が大きいと筆者は見る。同じ日に、Rocket Labなどの宇宙関連株も4〜6%下げている。

では、今回の主役であるAI部門で、何が起きたのか。

Ⅱ.AI部門が初の黒字:赤字続きの部門が、稼ぐ側に回った

結論から言うと、AI部門は営業黒字4.31億ドルとなり、予想(1,350万ドルの赤字)を大きく上回った。大型買収の費用を払ったうえでの黒字だ。

AI部門の営業損益は、この1年で次のように変わった。

  • 2025年7〜9月期:17.2億ドルの赤字
  • 2026年4〜6月期:12.6億ドルの赤字
  • 2026年7〜9月期:4.31億ドルの黒字

売上は75.6億ドル(約1.2兆円)で、前年同期の約9倍だ。何で稼いでいるのか。ロイターによると、売上の大半は、Anthropic、Google、Reflection AIといったAI開発企業に、データセンターの処理能力を貸し出して得たものだ。AIの開発には大量の計算能力が要る。その不足に悩む企業へ、SpaceXが設備を貸す事業が、一気に立ち上がった形だ。

買収費用を払っても、黒字になった

SpaceXは8月に、AIコーディングツールのCursorの買収を完了した。買収額は600億ドル(約9.5兆円)相当で、すべて株式での取引だ。買収した会社の社員を引き留めるために、SpaceX株で払う報酬は、会計上、費用になる。Q3には、その費用が12.17億ドル(約1,923億円)計上された。

黒字の4.31億ドルは、この大きな費用を引いたあとの数字だ。費用を足し戻すと、約16.5億ドル(約2,604億円)の黒字になる計算で、経営陣も「約16億ドル」と説明したと報じられている。大きな一時的な負担を抱えながら、黒字を出せたということだ。

売上75.6億ドルには、買収したCursorの売上6.08億ドル(約961億円)も含まれる。ただ、これを除いても約69.5億ドルで、前年同期の約8.6倍だ(筆者の計算)。買収に頼らない部分も、大きく伸びている。

AI部門以外は、どうだったのか。

Ⅲ.Starlinkも好調。部門別の成績を、前年・前期と比べる

結論から言うと、AI部門の黒字を支えているのは、利益の柱であるStarlink(通信部門)だ。宇宙(ロケット)部門も、赤字がほぼなくなった。

通信部門の営業利益は23.7億ドル(約3,745億円)で、全社の営業利益の大部分を占める。契約者数は160万人増えて1,360万人となり、アナリスト予想の1,219万人を上回った。1契約あたりの月間売上(ARPU)も、前期の66ドルから69ドルに上がった。宇宙部門は、営業損益が700万ドルの赤字とほぼ収支均衡になり、初の収益を生む商業ミッションとして、Starshipで26基のStarlink次世代衛星を軌道に運んだ。部門別の数字を、表で並べる。

項目(単位:億ドル)前年同期
(2025年7〜9月)
Q2
(2026年4〜6月)
Q3
(2026年7〜9月)
売上高(全社)55.878.1145.8
 うちAI部門8.125.675.6
 うち通信部門31.042.952.5
営業損益(全社)-2.7-1.4+27.9
 うちAI部門-17.2-12.6+4.3
 うち通信部門+11.9+16.6+23.7
 うち宇宙部門+2.6-5.4-0.1

出所:SpaceXのSECへの提出書類(2026年10月20日の決算発表資料)。四捨五入のため、合計が合わない場合がある。円換算は1ドル=158円。

Q3は、AIも通信も、そろって前の期より良くなった。そして、会社はこの勢いが続くと見ている。

Ⅳ.来期の売上は2倍超の見通し。アナリストは目標株価を引き上げた

結論から言うと、今回の決算で一番強気だったのは、足元の数字より先の見通しだ。会社は、来期の売上が今期の2倍を超えると見ている。

CFO(最高財務責任者)のジョンセン氏は、2027年1〜3月期の売上高を、330億〜370億ドル(約5.2兆〜5.8兆円)と見込むと述べたと報じられた。アナリスト予想の約222億ドルを大きく上回り、今回のQ3(145.8億ドル)の2.3〜2.5倍にあたる。さらにCFOは、年間経常収益(毎年見込める定期的な売上)を、2026年末までに約1,000億ドル(約15.8兆円)にするとの見通しも改めて示した。マスク氏は、2027年末までに5,000億〜1兆ドルになるとも語った。マスク氏はこれまで、短期の見通しを必ずしも達成してこなかったという指摘もあるが、会社が公式にここまで示したこと自体が、自信の表れだ。

アナリストの反応も前向きだった。決算後に目標株価を引き上げた主な証券会社は、次のとおりだ(報道ベース)。

  • キャンター・フィッツジェラルド:246ドル → 345ドル
  • ウェルズ・ファーゴ:214ドル → 274ドル
  • ゴールドマン・サックス:230ドル → 245ドル
  • シティグループ:200ドル → 240ドル
  • TDコーエン:200ドル → 224ドル

決算後は、ほかにバンク・オブ・アメリカが235ドルから275ドルへ引き上げた。決算前の10月16日には、JPモルガンが目標株価を500ドルに引き上げている。アナリストの12か月先の平均目標株価は240ドル前後で(TipRanks)、22日の終値144.75ドルより約6割高い。一方、調査会社Morningstarは、決算後に適正企業価値を1株62ドルから70ドルへ引き上げたものの、現在の株価はその約2倍だとしている。見方は大きく割れている。

この決算の勢いのなかで、マスク氏はもう一つ、大きな話を持ち出した。

Ⅴ.テスラとの合併協議を、マスク氏が公式に認めた

結論から言うと、マスク氏は決算説明会で、SpaceXとテスラの合併は「良い案」だと述べ、協議のための特別委員会を設置したと明らかにした。ただし、取引条件は決まっていない。

ロイターによると、マスク氏は「良い考えだと思うが、実際には両社の特別委員会次第だ」と述べた。マスク氏は両社を率いる立場で利益相反があるため、委員会の協議には参加しない。統合の利点として、超知能ソフトの開発、半導体設計、ロボット工学、通信などでの協力を挙げた。両社の時価総額を単純に合計すると、約3.5兆ドル(約550兆円)になる(時事通信)。

一方、特別委員会は取引条件で合意しておらず、合併が実現すると考えるのは時期尚早だ、ともマスク氏は述べている。テスラ側では、発行済み株式全体の過半数の賛成が必要とされ、高い壁だと報じられている。テスラは決算発表(21日)で、合併について新しい情報を示さなかった。バークレイズは、12月のテスラ年次株主総会の前に合意が発表される可能性があるとの見方を示している。条件が出るまでは、SpaceXの株主にとって良いか悪いかを判断できない。

22日には、ロイターが、協議の関係者の話として次のように報じた。協議は初期段階で、SpaceXがテスラを買収する案と、新しい持ち株会社の下で合併する案が検討されている。全株式交換も選択肢だ。一方、マスク氏が合併を公に支持したことで、株主の精査を招き、手続きが数週間遅れかねないと懸念する声がある。2016年のテスラによるSolarCity買収では、マスク氏の関与が株主訴訟になった前例がある。アナリストの間には、テスラを吸収すると、SpaceXの株主の持ち分が薄まる(希薄化)との指摘もある。続報を待つ材料だ。

ここまでが、良い材料だ。次に、気になる点を整理する。

Ⅵ.気になる点は6つ。それでも、黒字と見通しの価値は大きい

結論から言うと、気になる点は「投資の重さ」「費用の継続」「稼ぎ方の持続性」「ロックアップ」「株価の水準」「合併相手テスラの減益と協議の不確実性」の6つだ。ただ、どれも黒字転換という事実を打ち消すものではない。

株主として確認しておきたい6点(投資の推奨ではありません)
  • ①設備投資がまだ大きい:AI部門の設備投資は164.4億ドル(約2.6兆円)で、同部門の稼ぎ(減価償却などを除く)49.5億ドルの約3.3倍。全社でも、営業キャッシュフロー96.3億ドルから設備投資195.9億ドルを引くと、約100億ドル(約1.6兆円)の資金が出ていった計算だ(決算資料から筆者が算出)。第4四半期の設備投資は350億〜400億ドルの見通し。ただし、手元には現金と有価証券が約898億ドル(約14.2兆円)あり、当面の資金には余裕がある
  • ②Cursor関連の費用は、今後も続く可能性がある:買収後の株式報酬は、総額で約234億ドル(約3.7兆円)と見込まれ、今後の決算にも出てくる。Q3のように、費用を引いても黒字を保てるかが焦点
  • ③稼ぎ方が、レンタル価格に左右される:ロイターのコラム(Breakingviews)は、高い収益率は半導体不足でレンタル価格が高いことに支えられていると指摘する。価格は今後下がるとの見方もある
  • ④ロックアップ(大株主の売却制限)が続く:22日に最大約13億株が解除され、株価は9.1%下がった(ただし、地合いの悪化も重なっている)。続いて10月24日(土)に最大約3.3億株、12月8日に最大約8億株が解除される(上場時の目論見書による。いずれも「最大」の数字)。実際の売却は保有者次第だが、需給の重しになりうる
  • ⑤株価の水準:Morningstarの適正企業価値は70ドルで、現在の株価はその約2倍。株価は決算で大きく上がった分、期待が先に織り込まれていた面があり、22日にその一部が戻った
  • ⑥合併相手のテスラが減益、協議にも不確実性:テスラの7〜9月期は、売上が280億ドルとほぼ横ばいで、営業利益は55.8%減の7.18億ドル(営業利益率2.6%)。SpaceXの営業利益27.9億ドルは、その約3.9倍にあたる。合併が実現すれば、収益力が落ちた事業が加わる。協議が遅れかねないとの報道もあり、条件次第でSpaceXの株主への影響は変わる

この6点は、いずれも「黒字が続くか」「株価が行き過ぎていないか」に関わる。ただ、今回の決算は、これまで赤字だったAI部門が、大型買収の費用を払ってもなお黒字になりうることを示した。しかも会社は、来期の売上が2倍超になる見通しまで示している。方向性としては追い風だ。

結び——サプライズ決算を、今後も追っていく

冒頭に戻る。今回の決算は、SpaceXの株主にとって、サプライズだった。売上は予想を大きく超え、赤字続きだったAI部門が初めて黒字になり、会社全体の純利益も44億ドルの黒字になった。株価は翌日に7.8%上がったが、その翌日には9.1%下がった。

気になる点は、6つある。それでも、赤字の部門が黒字に変わったことと、来期の売上見通しの大きさは、重い材料だ。筆者は、AI部門の黒字が続くか、設備投資を回収できるか、そしてテスラとの合併協議がどう進むかを、これからも追っていきたい。

SpaceXの上場時の経緯と株価は上場記事、前回の決算とロックアップ解除の仕組みはQ2決算記事で詳しく書いている。あわせて読んでほしい。

【更新予定】

テスラとの合併協議(特別委員会の進展)、ロックアップ解除後の株価(10月24日・12月8日の解除を含む)、次回(2026年10〜12月期)の決算について、判明しだい、この欄に追記します。

免責事項 ── DISCLAIMER
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・銘柄・国・地域への投資を推奨するものではありません。個別株の将来の業績・株価を保証するものではなく、記載した予想値・見通し・目標株価はアナリストまたは経営陣のもので、報道にもとづくものです。掲載データは2026年10月20日〜23日時点の公開情報(SpaceXがSECに提出した2026年7〜9月期の決算発表資料、各種報道)に基づくものであり、状況は流動的に変化します。「AI部門」は、決算資料上の「SI(Super Intelligence)セグメント」を指します。株価の動き、予想値、経営陣の発言(テスラとの合併協議・将来目標・来期の売上見通しを含む)、アナリストの目標株価は報道にもとづくもので、一次資料で確認できていないものを含みます。ロックアップの日程と株数は、上場時の目論見書(424B4)にもとづく「最大」の数字です。ロイターのコラム(Breakingviews)は、コラム執筆者個人の見解にもとづくものです。テスラとの合併は、取引条件が決まっておらず、実現するかどうかは未確定です。為替換算は概算レート(1ドル=158円)によるものです。投資には元本割れのリスクがあります。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。
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