エヌビディア決算、四半期売上15兆円で過去最高
——株価8.7%高の裏に残る「三つの宿題」
2026年8月26日発表(米国市場引け後)・8月27日終値227.98ドル(前日比+8.7%)までの動きを検証
つみたてNISAで全世界株やS&P500のインデックスファンドを買っている人は、知らないうちにこの会社の株主になっている。時価総額で世界最大、指数の中でも最大級の比重を占めるエヌビディア(NVIDIA)だ。
そのエヌビディアが2026年8月26日、四半期決算を発表した。売上高は前年同期の2倍を超えて過去最高。翌27日の株価は一日で8.7%上がり、米国のハイテク株全体を押し上げた。数字だけ見れば、AIブームはまだ息切れしていない。
それでも「手放しで喜べる決算ではない」という声は消えなかった。決算そのものより、経営陣が同時に語った来期の見通しと、その実現にかかるコスト。そして決算と同じ週に飛び込んだ1兆円超の買収報道。記録更新の中身と、そこに残った三つの宿題を、数字から順に読み解く。
※「FY2027 第2四半期」は、エヌビディアの会計年度が暦年より約11か月先行するため、2026年5〜7月期の実績を指す。買収など一部は報道段階の情報で、本文で都度明記する。円換算は1ドル=159円の概算。
①何が「過去最高」だったのか
結論から言うと、伸びのほとんどはデータセンター事業ひとつで説明できる。会社全体が「AIの計算基盤を売る会社」になった四半期だった。
前年同期比+106%/前四半期比+18%
前年同期比+117%/全社の約93%
前年同期比+120%
売上高962億ドル(約15.3兆円)は前年同期の467億ドルから2倍を超え、市場予想(約920億ドル)も上回った。粗利益率75.0%、株主還元(自社株買い+配当)は四半期として過去最高の260億ドル。どの指標も記録更新だ。原動力はデータセンターで、売上890億ドルは全社の約93%を占める。うちクラウド大手(ハイパースケーラー)向けが約490億ドル。次世代GPU「Blackwell(ブラックウェル)」の需要が引き続き強い、という説明だった。

「ゲーミング」が独立した事業でなくなった
決算の見せ方も変わった。エヌビディアは今期から、ゲーミング(GeForce)やロボティクス、自動車、AI PCなどをまとめて「エッジコンピューティング」という新区分に統合し、市場向けの区分を「データセンター」と「エッジコンピューティング」の2本立てにした。そのエッジの売上は72億ドル(前年同期比+27%)。小さくはないが、データセンターの890億ドルと並べると別会社の数字に見える。ゲーム用GPUの会社が、AIインフラの会社へ姿を変えたことが、開示の形にも表れた。
②市場はなぜ「上昇」で応えたのか
結論から言うと、株価を動かしたのは決算の数字より、経営陣が示した「来期も約70%成長する」という見通しだった。市場の事前予想を大きく上回っていた。
エヌビディアの株は近年、good決算でも「材料出尽くし」で売られることが多く、過去5四半期はいずれも予想を上回りながら発表翌日は平均で下げていた。今回は違った。8月27日の終値は227.98ドル、前日比プラス8.7%。同じ日にナスダック総合はプラス1.6%、S&P500はプラス0.7%と、市場全体が押し上げられた。
効いたのは来期(FY2028)の見通しだ。CFOのコレット・クレス氏が「来期の売上は約70%成長すると見込む」と述べた。市場予想(LSEG集計で約44%)を大きく上回り、「AIの需要はまだ枯れていない」との受け止めが広がった。次の四半期(FY2027 Q3)のガイダンスも売上1,080億ドル(約17.2兆円)プラスマイナス2%と予想超え。次世代GPU「Vera Rubin(ヴェラ・ルービン)」も8月に出荷が始まり、Q3にはこれだけでデータセンター売上の約2割を占める見通しだという。
誰が買っているのか──浮かび上がるスペースXの名前
エヌビディアは顧客名を個別に開示しない。ただ今回の開示を分析したアナリストからは、スペースX(SpaceX)がすでに大口顧客の一角ではないかとの指摘が出ている。エヌビディアは今期、ある大口顧客を「AIクラウド・産業向け」から「ハイパースケーラー向け」へ分類変更しており、これがスペースXではないか、というものだ。株探(MINKABU PRESS)が伝えた試算では、スペースXの寄与は直近6か月で約130億ドルに達した可能性があるという。ただしいずれも第三者の推計で、エヌビディアが認めた数字ではない。
KABU気は上場後初決算を「SpaceX、IPO後初の決算は「予想超え」なのに株価急落」で取り上げ、「稼いだ額の倍を設備投資に回している」と書いた。その投資先の多くがエヌビディアだった、ということになる。AIブームの資金は、一部の顔ぶれの間を循環している。この点は⑤で改めて触れる。
ここまでは強気材料だ。だが同じ決算説明会で、経営陣は自ら三つの「宿題」を口にしている。
③宿題その1──利益率は、ここから下がる
結論から言うと、過去最高の決算と同じ場で、CFOは「粗利益率はこの先いったん71〜72%まで下がる」と自ら予告した。原因はメモリの価格上昇だ。
今期の粗利益率は75.0%。だが会社が示した見通しはこうだ。
| 時期 | 粗利益率(GAAP・非GAAPともほぼ同水準) |
|---|---|
| FY2027 Q2(実績) | 75.0% |
| FY2027 Q3(見通し) | 約74%(±0.5ポイント) |
| FY2027 Q4(見通し) | 71〜72%(ここが底) |
| FY2028(見通し) | 72〜73%で落ち着く |
決算説明会でのCFO発言に基づく。実際の数値は今後の四半期決算で変動しうる。

下がる理由は、GPUに載せる高帯域幅メモリ(HBM)の価格高騰だ。クレスCFOは「価格上昇の規模は当社の従来想定を超え、来年にかけてさらに上がる」「メモリ不足はAIの構築それ自体に牽引されている」と説明した。AIブームで自ら需要を膨らませ、その結果として部材が高くなり、自社の利益率を圧迫する——という構図である。
クレスCFOの説明(決算説明会・要旨)
「未解決の問いとして残しておきたくないので、率直に言う。粗利益率はQ4に71〜72%で底を打ち、その後は価格改定の効果でFY2028に72〜73%へ戻ると見ている」
注目すべきは、会社側がこれを「聞かれる前に」開示したことだ。好決算の高揚感の中であえてマイナス材料を先に出す姿勢は、「この問題は無視できない」という認識の表れとも読める。数ポイントの低下でも、10兆円超の売上に対しては巨額の利益の増減になる。
④宿題その2──「供給制約」という言葉の重さ
結論から言うと、来期プラス70%という数字は「需要の上限」ではなく「供給の上限」だとCFOは説明した。裏返せば、作れる分しか売れない状態が続いている。
クレスCFOは来期の見通しを「供給制約下の見通し(a supply constrained outlook)」と明言した。基礎的な需要はもっと大きく、供給が追いつく範囲で約70%になる、という説明だ。投資家にとっては二つの意味がある。前向きに見れば、需要が供給を上回るうちは値下げ競争に巻き込まれず、価格を維持しやすい。慎重に見れば、部材の確保や生産計画がひとつ狂えば、その70%は下振れしうる。
それを象徴するのが、決算とともに開示された調達コミットメントの急増だ。将来の部材購入などをあらかじめ約束した金額が、前四半期の約1,190億ドルから今期は約2,790億ドル(約44兆円)へ倍増した。増加分は主にメモリの調達だという。次世代品に備えた在庫も316億ドルへ積み上がった。
📌 見方が分かれる。「需要を確信しているからこそ、値上がり前にメモリを大量に押さえた」と読めば強気材料。「これだけの金額を先に約束しないと供給を確保できない」と読めば、それ自体がリスクの大きさを示す。同じ数字が、立場によって逆の意味に見える。
⑤宿題その3──チップを売り、資金も出し、会社ごと買う
結論から言うと、エヌビディアはいま、AIの「上の層」——モデルの配布基盤やアプリ企業——を出資や買収で囲い込もうとしている。ただし、その多くはまだ「報道段階」の話だ。
決算発表とほぼ同時期、複数の米メディアが「エヌビディアがHugging Face(ハギングフェイス)を約129億ドル(約2.05兆円)で買収することで合意した」と報じた。Hugging Faceは、オープンなAIモデルやデータセットが集まる開発者向けプラットフォームで「AIのGitHub」とも呼ばれる。
ただしこれは2026年8月末時点で正式発表されておらず、報道各社も「署名済みの最終合意には至らず、破談の可能性も残る」としている。両社ともコメントしていない。年換算売上が約1.5億ドルと報じられる企業に約129億ドルという価格で、しかもHugging Faceは昨年、エヌビディアからの5億ドルの出資(評価額70億ドル)を「単一の支配的な株主を望まない」として断ったとも報じられていた。価格・実現性とも、確定情報として扱うべきではない。
買収報道だけではない。ここ数か月、エヌビディアが関わったと報じられた動きを並べると、傾向が見えてくる。
Perplexity
AI検索の新興企業。この評価額での出資を検討していると報じられている。
Poolside
AI開発ソフトの新興企業。ライセンス(約60億ドル)と出資(約10億ドル)の組み合わせと報じられている。
OpenAI
データセンターのリース料や設備購入を、エヌビディアが債務保証する案が報じられた。金額・確度とも流動的。
上記はいずれも報道ベースで、契約の有無・金額・時期は確定していない。2025年末以降、Groqなどでも「ライセンス+出資」型の関与が報じられている。
共通するのは、出資先がそのままGPUの買い手になる、という循環だ。出資はアプリ企業の評価額を押し上げ、その企業はエヌビディアから計算資源を買い、エヌビディアの売上が増える。②で触れたスペースXの件も、構図としては地続きにある。この「循環的な資金の流れ(circular financing)」について、著名投資家のマイケル・バーリー氏や証券会社のアナリストは「懸念は正当だ」と指摘する一方、「垂直統合による正当な囲い込みだ」という見方もある。AIエコシステム全体の構造評価はKABU気の相場・マクロ経済シリーズで別途扱う。ここでは「エヌビディアの売上の一部は、自らが資金を回した先から戻ってきており、その規模がまだ外部から検証しにくい」という点を押さえておきたい。
⑥中国は、どう「入っていない」か
結論から言うと、いまの絶好調に中国はほとんど寄与しておらず、来期の見通しにも中国分は一切含まれていない。
米国の対中輸出規制の下で、エヌビディアは中国向けに性能を抑えた「H20」というGPUを販売してきたが、今期のH20の中国向け出荷は「データセンター売上全体の1%未満」にとどまった。前年同期には対中規制に絡んで45億ドルの引当を計上した経緯もあり、それと比べれば今期の中国の影響は良くも悪くも小さい。会社側はQ3のガイダンスにも来期の見通しにも「中国のデータセンター売上はゼロ」で置いている。理由は「地政学的な不確実性」だ。より高性能な「H200」については、中国当局がByteDance・Tencentなど一部企業に各約1万個、企業ごとの割当(7.5万個)の約13%にあたる輸入を認めたとフィナンシャル・タイムズなどが報じているが、その多くは香港に留め置く方針とされ、なお報道段階にとどまる。
📌 投資家目線ではシンプルだ。いまの好業績は中国抜きで達成されている。だから中国リスクが再燃しても直接の下押しは限定的で、逆に規制が緩和されれば「見通しに入っていない上振れ要因」になりうる。輸出規制そのものの評価や米中の攻防は、相場・マクロ経済シリーズで改めて扱う。
⑦「高い」のか「安い」のか
結論から言うと、割高か割安かの評価は「来期プラス70%成長が本当に実現するか」という一点にほぼ集約される。
8月27日時点で、エヌビディアの時価総額は約5.5兆ドル(約880兆円)。世界最大の企業であり、S&P500やオルカン(全世界株)の中でも最大級の比重を占める。日本で投信を通じて間接保有している個人も多い。予想PER(株価収益率)は集計サイトによって幅があるが、来期プラス70%成長を織り込めば1株利益が大きく伸びるため、株価が上がっても予想ベースの倍率は見かけ上それほど高く出ない。逆に成長が想定通り進まなければ倍率は跳ね上がる。いまのバリュエーションは「70%成長」という前提の上に立っている。
アナリスト評価は総じて強気で、決算後に目標株価を大きく引き上げた証券会社もある。ウォール街全体でも「買い」判断が大多数だ。ただしeToroのストラテジストは「決算はAIブームの需要が枯れていないことを示した。ただ、その成長を実現するコストと資本負担は増している」と、③④で見た宿題を指摘している。市場は「成長は続く」に賭けており、その賭けが外れたときの下落幅は、期待が高いぶんだけ大きくなる。
⑧投資家は何を見るべきか
結論から言うと、「過去最高」は本物だが、その持続性は「利益率」「供給」「循環」という三つの宿題をどう乗り越えるかにかかっている。買いか売りかは、ここでは言わない。
冒頭に書いた通り、インデックス投資をしている人はすでにこの会社の株主だ。個別に買い増すか考える人も、指数を通じて持ち続ける人も、見るべき場所は同じだろう。次の四半期(FY2027 Q3、2026年11月発表見込み)で、粗利益率が予告通り74%前後に収まるか。調達コミットメントがさらに膨らむか。Hugging Face買収が正式にまとまるのか、立ち消えるのか。宿題の答え合わせは、そこから始まる。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 決算発表日 | 2026年8月26日(米国市場引け後)/対象は2026年5〜7月期 |
| 売上高 | 962億ドル(約15.3兆円、前年同期比+106%)過去最高 |
| データセンター売上 | 890億ドル(前年同期比+117%、全社の約93%) |
| 1株利益(非GAAP) | 2.22ドル(前年同期比+120%) |
| 粗利益率 | 75.0%(Q4に71〜72%まで低下する見通し) |
| Q3見通し | 売上1,080億ドル ±2%/中国分はゼロで計上 |
| 来期(FY2028)見通し | 売上約70%成長(「供給制約下の見通し」) |
| 調達コミットメント | 約2,790億ドル(前四半期の約1,190億ドルから倍増、主にメモリ) |
| 株価(8月27日終値) | 227.98ドル(前日比+8.7%)/時価総額 約5.5兆ドル |
| 同時期の主な報道 | Hugging Face を約129億ドルで買収合意(未確定・正式発表なし) |
🏦 エヌビディア(NVDA)は日本の証券会社から米国株として売買できる
楽天証券なら米国株の取引手数料や為替スプレッドを事前に確認でき、NISA成長投資枠にも対応。
※本リンクはアフィリエイトリンクです(PR)
本記事には一部アフィリエイトリンクを含みます(楽天証券)。本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・銘柄・国・地域への投資を推奨するものではありません。将来の業績・株価を保証するものでもありません。掲載している決算数値・株価・アナリスト評価は2026年8月26日〜28日時点の公開情報および決算説明会での経営陣の発言に基づくものであり、今後変動します。Hugging Faceの買収、Perplexity・Poolsideへの出資、OpenAIへの保証などは本稿執筆時点で正式発表されていない報道段階の情報であり、事実として断定するものではありません。「循環的な資金の流れ」および米中の輸出規制に関する評価は、複数の解釈が存在する事象です。為替換算は概算レート(1ドル=159円、2026年8月27日時点)によるものです。投資には元本割れのリスクがあります。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。本記事の情報に基づく投資判断の結果について、KABU気は一切の責任を負いかねます。