インデックス投資のやめどき。高値圏で売るべきか、持ち続けるべきか

インデックス投資のやめどき。
高値圏で売るべきか、持ち続けるべきか

積立投資のS&P500やオルカン、売ったほうがいいのか——その問いに、データで答える。

積立NISAをしている友人に、こんな相談をされた。

友人(積立NISA・積立歴3年)

「最近また暴落が続いてるんだけど、S&P500って今のうちに売っておいたほうがいいと思う? これが私の全財産みたいなものだから、正直すごく不安で」

私の答えは「今すぐお金が必要なら一部売るのはあり。でも困っていないなら、積み立ては続けてみたら」というものだった。ちなみに私自身はアメリカより日本推し派で、S&P500はすでに手放してTOPIXに全振りしている。でも、それは私の判断であって、誰もが同じにすべきとは思っていない。

この記事は、インデックス投資の「やめどき」を考えるための判断材料を整理したものだ。売るかどうかの答えは最後まで出さない。自分の頭で判断するための根拠を渡すことが、この記事の目的だ。

目次

「やめどき」には、2種類ある

インデックス投資の「やめどき」を考えるとき、そもそも何が不安なのかによって、向き合うべき問いがまったく違う。自分がどちらの悩みを持っているか、確認してほしい。

「長期で積み立ててきたけど、じゃあいつ売ればいいんだろう」

老後のために積み立て続けてきた。でも出口は考えていない。暴落や高値圏になるたびに「このまま持ち続けていいのか」と迷う——実は「いつ売るか」を最初から決めていないことが、不安の根本かもしれない。

→ 出口のルールを持つための「4%ルール」を解説
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「今の相場、なんか高値圏じゃないか。売ったほうがいいのか」

暴落が続いていて不安。もっと下がる前に売っておくべきか。でも売ったら後悔するかも——今の相場をどう読めばいいかわからない。

→ まず「今が本当に高値圏か」を指標で確認
→ その上で「高値圏での動き方」を解説

もちろん、両方が気になる人もいるだろう。この2つの悩みは別々の問いだが、答えは一つの地図の中にある。上から順に読み進めてもらえれば、自然につながる。

老後の取り崩し方——「4%ルール」とは

長期投資の出口戦略として最も有名なのが、「4%ルール」だ。1998年にアメリカのトリニティ大学が発表した研究から導かれたもので、「毎年、資産の4%以内を取り崩していけば、30年以上経っても資産が尽きる確率は非常に低い」という法則だ。

なぜ「4%」なのか

アメリカの過去データをもとに、S&P500の平均成長率(年7%)からインフレ率(年3%)を引いた「実質リターン4%」の範囲内で取り崩せば、資産が目減りしないという計算だ。運用しながら使うことで、元本が利益を生み続ける仕組み。

では日本(TOPIX)の場合は?
公的年金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の20年超にわたる国内株式運用実績を見ると、名目リターンは年5%前後。そこに足元のインフレ率約2%を差し引くと、日本市場における実質リターンの目安は3%前後で見積もるのが安全だ。「日本版3%ルール」として考えると現実的かもしれない。ただし日本には「失われた30年」という長期停滞の歴史もあり、どの期間を基準にするかで数字は変わる点は念頭に置いておきたい。

4%ルールには、大きく2つの使い方がある。

定額取り崩し引退時点の総資産(含み益込み)の4%を
毎年一定額で引き出す

例)引退時の総資産3,000万円(含み益含む)
→ 毎年120万円(月10万円)を取り崩す
✓ 生活費の計画が立てやすい✗ 暴落時にも同額を売却 → 安値売りが増えるリスク

定率取り崩しその年の総資産残高の4%を
毎年割合で引き出す

例)残高3,000万円の年は120万円
暴落で1,000万円になった年は40万円
✓ 下落時は売却量が自動で減る → 資産が長持ちしやすい✗ 受け取り額が毎年変わる → 現金の備えが別途必要

⚠️ 4%ルールの注意点①:これはアメリカの過去データが前提。日本市場でも同じとは限らないし、将来の成長率を保証するものでもない。NISAで非課税運用している場合は税金の問題が薄れるが、「参考の目安」として捉えよう。

⚠️ 4%ルールの注意点②(日本在住者向け):S&P500など外貨建て資産を円に換えて生活費にする場合、「株安+円高」が同時に来ると資産の目減りが加速するリスクがある。例えばリタイア直後に1ドル100円台まで円高が進むと、同じ円額を維持するために大量の口数を売却することになる。だからこそ、外貨建て資産の取り崩しは定率方式のほうが日本在住者には向いているとも言われる。

今の相場は、どこにいるのか

「高値圏かどうか」は、誰にも断言できない。相場がいつ天井を打ち、いつ底を打つかを正確に予測できる人間はいない。ただ、「今がどのくらい過熱しているか」を測る指標はある。代表的な2つを見てみよう。

バフェット指標——「市場の体重計」(米国市場)

著名投資家ウォーレン・バフェット氏が、「いかなる瞬間においても、評価額がどの程度の水準にあるかを知るための唯一にして最善の尺度だ」と語った指標。計算はシンプルで、米国株式市場の総時価総額 ÷ 米国GDP だ。国の経済の実力(GDP)に対して、株価の規模が釣り合っているかを測る「体重計」のようなもの。

BUFFETT INDICATOR ── 米国市場のバフェット指標・2026年現在

70〜80%
割安

100%
適正

150%
割高

200%
危険

232%
現在

232%

バフェット氏が「火遊びをしているようなもの」と表現した警戒水準200%を、大幅に上回っている。過去にこの水準に達した局面は、2000年のITバブル崩壊直前と、2021年のコロナ禍ピーク直前だった。


70〜80%:「株を買えばうまくいく可能性が高い」とバフェット氏が語る水準

逆に200%を超えると「火遊び」。2026年4月には232.6%という過去最高値も記録している。

シラーPER——「市場の長期温度計」

ノーベル経済学賞受賞者のロバート・シラー教授が考案した指標。現在の株価 ÷ 過去10年間のインフレ調整後の平均利益で計算される。普通のPER(株価収益率)は単年の利益を使うため、景気の波で数値が大きくブレる弱点があるが、シラーPERは10年分を平均することで、「企業の真の稼ぐ力」に対して今の株価が高いか安いかを測れる「長期の温度計」だ。

シラーPER・現在値
40.87
2026年6月9日時点
ITバブル最高値(1999年)
44.19
史上最高値。この直後に
ITバブルが崩壊した
長期平均
17
過去100年超の平均は
約17倍台

現在の40.87倍という水準は、ITバブル崩壊直前の44.19倍にじりじりと近づいている。シラーPERが40倍を超える局面で投資した場合、その後の10年間のリターンはマイナスまたは低リターンになるリスクが高いと、歴史的なデータは示している。

📌 「高値圏だから明日暴落する」わけではない。シラーPERが割高でも、相場がさらに数年間上昇し続けることはある。これはあくまで「長期的な期待リターンが低下している」というシグナルだ。積み立て投資を明日やめる理由にはならないが、一括での大きな投資には慎重になる根拠にはなる。

高値圏で、どう動くか

指標が「割高」を示している今、インデックス投資家には大きく3つの選択肢がある。どれが正解かは一概には言えない。大事なのは、「自分が続けられる戦略はどれか」だ。

✅ 推奨
積み立て継続

高値でも安値でも毎月一定額を買い続ける。感情を排除できるのが最大の強み。暴落は「安く仕込める機会」と捉えられるかが、継続の鍵になる。

⚙ 積み立ての自動設定を変えない。アプリを開きすぎない。

⚠️ 条件付き
ルール基づく
リバランス

指標を根拠に一部を利確し、安全資産へ。安値で買い直す。ルールを事前に決めていることが絶対条件。感情で動くと失敗する。

⚙ 「シラーPERが〇〇倍を超えたら△%売る」を先に決める。

❌ 最悪
暴落のたびに
売る

脳は「損の痛みを止めるために売れ」と命令を出す。売った後、相場が戻ると「また下がるかも」で買い戻せなくなる。安値で売って高値で買い直す最悪の逆張り。

⚙ NISAでは「非課税の権利を安値で手放す」ことになる。

リバランスを実践するなら——具体的な手順

「相場が高いから一部売る」を感情ではなくルールとして実行するには、以下の手順が参考になる。

01

「目標の資産配分」をあらかじめ決めておく
例:株式70%・現金や安全資産30%。これがリバランスの基準点になる。この数字は相場の動きではなく、「自分がどこまでのリスクなら許容できるか」で決める。

02

指標が高水準になったら、株式を一部売却して安全資産に移すバフェット指標やシラーPERが歴史的な高水準に達したとき、株式の比率を下げる。例えば「株式70% → 50%」に変更し、差額を現金や国債へ。一括ではなく、分割して少しずつが原則。いつ下がるかは誰にもわからないので、焦らず段階的に動く。

03

大きく下落したタイミングで、安全資産を売って株式を買い戻す
暴落局面では一般的に国債などの安全資産は値上がりしやすい。値上がりした安全資産を売り、割安になった株式を買い直して、当初の目標配分(株式70%)に戻す。「安値で仕込む」のは感情ではなく、この事前のルールに従って行動するから成立する。

注意点:シラーPERが40倍を超えていても、相場がいつ下がるかは誰にもわからない。「割高だから売った」後に株価がさらに上がり続けた場合、その期間のリターンは低くなる。リバランスは「相場の天井を当てるゲーム」ではなく、「長期に持続可能なポートフォリオのリスク管理」として行うものだ。

狼狽売りが「最悪」な理由

暴落時に脳が「売れ」と命令を出す背景には、行動経済学で「損失回避バイアス」と呼ばれる心理がある。人間は利益の喜びより、損失の痛みを約2倍強く感じる生き物だ。だから「これ以上数字が減るのを見たくない」という本能が理性を上回り、売ってしまう。

問題は、その後だ。売った後、相場が回復してくると「また下がるかもしれない」という恐怖で買い戻す判断が非常に難しくなる。結果として、安値で売って高値で買い直すという、誰もがやってはいけないと知っている行動を、感情に任せて繰り返すことになる。

NISAで積み立てている人は、さらに注意が必要だ。新NISAは売却しても翌年以降に枠が復活するが、売ったその時点の非課税の恩恵は失われる。暴落した安値で売れば、そこから回復するはずだった非課税の値上がり益を、丸ごと手放すことになる。

インデックス投資とは突き詰めると、
「その国の未来を信じるかどうか」の
意思表明だと思っている。

── KABU-KIX

まとめ——「やめどき」より「どの成長に乗るか」

今、NISAで積み立てている多くの人は、含み益が出ているはずだ。だからこそ、高値圏が続いたり暴落が来たりすると「ここで売っておいたほうがいいのでは」という気持ちが湧いてくる。それは至極まともな感覚だと思う。

ただ、この記事で見てきた通り、そこに明確な答えはない。バフェット指標は232%を超え、シラーPERはITバブル直前に迫っている。数値は警戒を示している。でも「だから明日暴落する」とは誰も言い切れない。

判断が難しいからこそ、世界最大の投資家はどう考えているのかが気になる。バフェットは今、60兆円の現金を手元に置いたまま、動かない。一方で日本株だけは買い増し続けている。この行動の裏側には、何があるのか。

インデックス投資の本質は、「その国の成長性と国力に乗る」ことだ。S&P500に投資するとはアメリカの一強を信じること。今、そのアメリカが変わりつつある時代に、次の成長にどう乗るか——そこが問われている気がしている。

私自身が米国株を手放し、日本株を選んだ理由。そのヒントは、次回のテーマである「バフェットの動向」の中に隠れている。

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NEXT ── Market & Macro 02バフェットが60兆円の現金を抱えて
待っている理由

バークシャー・ハサウェイが積み上げた現金は、約3,970億ドル(60兆円超)。この数字が意味することと、バフェットが今なぜ日本株を買い続けているのかを読み解く。

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本記事には一部アフィリエイトリンクを含みます(楽天証券/TGアフィリエイト)。本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品・銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。掲載している数値(バフェット指標・シラーPERなど)は2026年6月14日時点の情報に基づくものであり、市場の変動によって随時変化します。投資には元本割れのリスクがあります。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。本記事の情報に基づく投資判断の結果について、KABU気は一切の責任を負いかねます。
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