伝説の相場師ランキング|石井久・是川銀蔵ら5人の実績と生涯

伝説の相場師ランキング
石井久・是川銀蔵ら5人の実績と生涯を読む

仕手戦の武勇伝は派手だ。だが生き残った人に共通していたのは、もっと地味な習慣だった。

住友金属鉱山の仕手戦で200億円、一代で長者番付全国1位——「伝説の相場師」という言葉には、こうした派手な武勇伝がつきまとう。ネット上で語られる「伝説の相場師ランキング」にも、そんな逸話を残した5人が並んでいる。だが、彼らの経歴を一人ずつ読み解いていくと、意外な共通点が見えてくる。派手な逸話の裏にあったのは、新聞を読み込む、身の丈を超えない、自分で調べて決める——今の個人投資家にもそのまま使える、地味な習慣だった。この記事では、石井久、遠山元一、是川銀蔵、越後正一、野村徳七の5人の実績を確認しながら、その習慣を今日から実践できる形に翻訳していく。

結論:5人に共通するのは、派手な武勇伝ではなく「地味な習慣」

結論から言うと、仕手戦の武勇伝が伝説として語り継がれる一方、この5人に共通していたのは、地道な情報収集と自分の頭で判断する姿勢という、地味な習慣だった。

順位人物立場地味な習慣
1位石井久証券会社創業者新聞・雑誌を読み込む地道な情報収集
2位遠山元一日興証券創業者身の丈を超えない慎重な資金管理
3位是川銀蔵“最後の相場師”人の勧めに頼らず自分で調べて決める
4位越後正一伊藤忠商事元社長・会長一つの成功に安住せず新分野へ広げる
5位野村徳七(二代)野村財閥創業者勘に頼らず調査という仕組みを作る

証券会社の創業者から、一代で財を築いた個人投資家まで、5人の立場はバラバラだ。それでも共通しているのは、特別な才能というより、今日から真似できる小さな習慣だということが分かる。まずは、このランキング自体がどこから来たものかを確認しておきたい。

このランキングの中身について

結論から言うと、順位そのものより、この5人が実際に何をしたかの中身の方が重要だ。

「伝説の相場師ランキング(日本人、有名人)」というタイトルで公開されているこのランキングは、「社会起業家ネットワーク」が運営するサイトに掲載されており、その中で投資助言業「アテル投資顧問」(代表・河端哲朗氏)が参照元として言及されている。アテル投資顧問自身が公式に発表したランキングかどうかは、ページ上からは明確に確認できない。

また、このランキングは実際には16位まで続いており、6位以降には現代の実業家・投資家も含まれる。今回はその中から、証券史上の実績が比較的裏付けやすい上位5人を扱う。1位〜5位という順位の選定基準(何を根拠に評価したか)は、出典ページに明記されていない。そのため本記事では、この順位を絶対的な評価としてではなく、あくまで参考情報として扱う。

出典の性質を踏まえたうえで、1位から順に、実際の実績と、そこから今日実践できることを見ていこう。

1位:石井久——地道な情報収集

結論から言うと、石井久の強さは的中の派手さではなく、新聞・雑誌を読み込む地道な情報収集にあった。

1923年、福岡県の農家に13人兄弟の7番目として生まれた石井久は、1947年に警視庁巡査となった後、1948年に証券業界へ無給で飛び込み、元手3万円を数千万円に増やした。1953年に江戸橋証券を創立し、同年のスターリン暴落を予言して的中させたことで知られる。1989年には高額納税者番付で全国2位となり、その直後のバブル崩壊も見抜いた。相場の現在地を富士山の「合目」にたとえて読む独自の手法を持っていたが、その情報源は特別なものではなく、「情報の8割は新聞・雑誌・書籍」というごく普通のものだったと語っている。2016年に92歳で逝去した。

💡 現代に置き換えると
SNSの噂やインフルエンサーの銘柄予想より先に、会社四季報や決算短信・有価証券報告書という一次情報を自分で読む習慣。石井久の「情報の8割は新聞・雑誌・書籍」という原則は、今なら会社四季報にあたる。

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石井久については、KABU気の既存記事「石井久とは何者か。伝説の相場師ランキング1位、”最後の相場師”の目」でさらに詳しく取り上げている。次に、同じランキングの2位に挙がる遠山元一を見ていこう。

2位:遠山元一——身の丈を超えない慎重さ

結論から言うと、遠山元一の強さは、少年期の没落を経験した者だけが持つ慎重さだった。

1890年、埼玉県比企郡三保谷村白井沼(現・川島町)の旧家の長男として生まれた遠山元一は、1903年、13歳のときに生家の家屋敷が人手に渡るという没落を経験する。1905年、16歳で兜町の株屋「半田商店」に丁稚奉公の小僧として入店し、その後の奉公・商売の経験を経て、1938年に川島屋證券会社を創業した。1944年、旧・日興證券との合併により社長に就任し、1948年には証券取引委員会の理事会議長を務めている。1952年に日興證券会長に就任し、1964年に退任するまでその職にあった。

1968年には、故郷の邸宅を財団法人化して遠山記念館とし、長年収集した美術品を収蔵した。美術品収集家としても名高く、1971年には故郷の名誉町民となっている。1972年に82歳で没した。石井久や是川銀蔵のような派手な仕手戦の逸話は残っていないが、没落を経験した人間ならではの慎重さで、業界の中枢に上り詰めた人物だ。

💡 現代に置き換えると
信用取引やレバレッジで背伸びせず、NISAのような非課税枠の範囲で、余裕資金だけを投資に回す習慣。遠山元一の慎重さは、一度すべてを失った経験から来ている。

次は、3位の是川銀蔵——同じく”最後の相場師”と呼ばれた男を見る。

3位:是川銀蔵——自分で調べて決める

結論から言うと、是川銀蔵の強さは、人の勧めではなく自分で調べて選ぶという原則を最後まで貫いたことだった。

1897年、兵庫県赤穂市福浦に生まれた是川銀蔵は、貧しい家庭で育ちながら事業と相場の両方で財を成し、「最後の相場師」と呼ばれるようになった。最も知られているのは、1981年から1982年にかけての住友金属鉱山をめぐる仕手戦だ。鹿児島県の菱刈鉱山で金鉱脈が発見されたという情報にいち早く着目し、現地調査を経て同社株を1,500万株前後買い集め、200億円の利益を得たとされる。この実績もあり、1983年の高額納税者番付(長者番付)で申告所得28億9,090万円を記録し、84歳にして全国1位となった。1992年に95歳で没している。

是川銀蔵は、自身の投資哲学を「投資5ヶ条」「カメ三則」という具体的な言葉の形で残している。

銘柄は人が奨めるものではなく、自分で勉強して選ぶ

是川銀蔵「投資5ヶ条」より

「銘柄は水面下にある優良なものを選んでじっと待つ」「過大な思惑はせず、手持ちの資金で行動する」といった「カメ三則」も、値上がり株を深追いせず、自分の頭で考えることを一貫して説いている。

💡 現代に置き換えると
SNSやYouTubeの「おすすめ銘柄」をそのまま買わず、決算資料や有価証券報告書を自分の目で確認してから判断する習慣。情報があふれる今だからこそ、「自分で勉強して選ぶ」という原則が効いてくる。

続く4位の越後正一は、株式ではなく商品相場でその名を轟かせた人物である。

4位:越後正一——一つの成功に安住しない

結論から言うと、越後正一の強さは、繊維相場という得意分野での成功に安住せず、新しい分野へ事業を広げたことだった。

1901年、滋賀県愛知郡八木荘村(現・彦根市)に生まれた越後正一は、1916年から伊藤忠の2代目・伊藤忠兵衛の書生として学業を続けながら奉公し、神戸高等商業学校(現・神戸大学)を卒業した。伊藤忠商事では綿糸・繊維の商品相場で連戦連勝を収め、「繊維相場の神様」と呼ばれるようになる。1927年には綿糸相場での大勝が契機となり、競合の丸紅が綿糸事業から撤退したと伝えられている。

1949年に取締役、1954年に常務、1959年に専務を経て、1960年に社長へ就任。非繊維部門を拡大して自動車・石油分野へ進出し、1974年に会長を退任するまでの間に、資本を6.5倍、人員を2.7倍、売上高を10倍にまで伸ばした。

成功は窮苦の間に芽生えており、失敗は得意満面の間に宿る

越後正一の言葉より

💡 現代に置き換えると
一つの銘柄・セクターで利益が出ても、そこに資金を集中させすぎず、業種をまたいで分散させる習慣。「得意満面の間に失敗が宿る」という言葉は、勝ちが続いたときほど思い出したい。

1991年、89歳で没した。最後に、日露戦争後の大相場で財を築き、野村財閥の礎を築いた野村徳七を見ていく。

5位:野村徳七——勘ではなく仕組みに頼る

結論から言うと、野村徳七(二代)の強さは、勘ではなく調査部門という仕組みを作ったことだった。

1878年生まれの野村徳七(二代)は、両替商を営んでいた初代野村徳七の長男として、大阪商人の家に育った。日露戦争(1904〜05年)終結後、市場が一時的な失望売りに転じた後、企業業績の改善や増配を背景に1905年初めから上昇相場に転じる中で、大きな利益を上げたとされる。生涯で日露戦争・第一次世界大戦を含む三度の大きな相場に関わり、いずれも勝利を収めたと伝えられている。

1918年に大阪野村銀行を設立し、1925年12月にその証券部門を野村證券として独立させた(営業開始は1926年1月)。ここで重要なのは、野村徳七が自分の勘だけに頼らなかったことだ。調査部門を設け、独自に作成した商況資料を顧客に提供するなど、当時としては先進的な手法を証券業に持ち込んだ。1945年、66歳で没した。

船は沈むが、株は沈まない

野村徳七(二代)の言葉より

💡 現代に置き換えると
決算のたびにゼロから調べ直すのではなく、AIツールを使って決算資料の要約や競合比較を効率化し、自分なりの「調査部門」を個人で持つ習慣。野村徳七が組織として作った調査機能は、今なら個人でも手が届く。

ここまでの5人は、いずれも近代日本の株式・商品市場を舞台にした人物だった。では、KABU気が普段「レジェンドの目」で扱っている本間宗久・リバモア・ギャンは、なぜこのランキングに入っていないのだろうか。

番外編:このランキングにいない相場師たち

結論から言うと、このランキングの出典が「日本人・有名人」という枠に限定されているため、江戸期の本間宗久や、米国のリバモア・ギャンは対象に入っていない。

KABU気が日々の「相場解説」でも参照している3人——本間宗久ジェシー・リバモアW・D・ギャン——は、いずれもこのランキングの対象になっていない。本間宗久は江戸時代の米相場、リバモアとギャンは20世紀初頭の米国株式・商品市場という、それぞれ異なる時代・国の人物だからだ。

だが、彼らの言葉を見ても、今回の5人と同じ「地味な習慣」に行き着く。本間宗久の「相場は人の気で動く」という観察も、リバモアの「待つことがすべてだ」という自己規律も、ギャンの「疑わしいときは何もしない」というルールも、派手な逸話の裏にある地道な自己管理だ。この3人を「なぜ3人で見るのか」という視点でまとめた記事も、KABU気には別途ある。レジェンドたちの目とは|3人の相場師で相場を立体的に読むでは、時間と価格を重視するギャン、資金と流れを追うリバモア、心理と空気を読む本間宗久という役割分担を整理している。

まとめ:5つの地味な習慣

結論から言うと、「伝説の相場師」という言葉の中身は派手な武勇伝ではなく、今日から真似できる5つの地味な習慣だ。

今日から真似できる5つの習慣
石井久:一次情報を自分で読む(会社四季報・決算短信)
遠山元一:余裕資金の範囲に投資額を収める
是川銀蔵:人の勧めより自分で調べて決める
越後正一:一つの銘柄・セクターに集中させすぎない
野村徳七:AI等を使って自分の「調査部門」を持つ

住友金属鉱山の仕手戦で200億円、一代で長者番付全国1位——冒頭で紹介した武勇伝は、確かに派手だ。しかし5人の経歴を一人ずつ読み解くと、そこにあったのは特別な才能ではなく、地道な情報収集と自分の頭で判断する姿勢という、地味な習慣だった。人物名そのものよりも、「彼らが何を大切にしていたか」を知り、今日の自分の投資に一つでも取り入れることの方が、実利は大きいはずだ。KABU気では、今回のような近代日本の相場師と、本間宗久・リバモア・ギャンという時代も国境も異なる3人、その両方の視点から、相場を読むためのヒントを紹介していきたい。

主な出典
  1. 「伝説の相場師ランキング(日本人、有名人)」(社会起業家ネットワーク運営サイト、アテル投資顧問を参照元とする掲載)。該当ページ
  2. KABU気「石井久とは何者か。伝説の相場師ランキング1位、”最後の相場師”の目」。記事ページ
  3. Wikipedia「遠山元一」。遠山元一
  4. SMBC日興証券「沿革」。沿革ページ
  5. Wikipedia「是川銀蔵」。是川銀蔵/news-postseven「”最後の相場師”こと是川銀蔵 遺産は2LDKマンションだけ」。記事
  6. 資産形成.com「”最後の相場師”是川銀蔵に学ぶ株式投資の基本原則」(投資5ヶ条・カメ三則の引用元)。記事
  7. ダイヤモンドオンライン「伊藤忠商事の『中興の祖』が、『人生は運と横着だ』という理由」。記事/Wikipedia「越後正一」。越後正一
  8. 経済界ウェブ「越後正一の名言(伊藤忠商事 元社長・元会長)」。記事
  9. 野村ホールディングス「創業者『野村徳七』」公式サイト。公式サイト/Wikipedia「野村徳七(二代)」。野村徳七(二代)
  10. note「名言との対話」1月15日、野村徳七「船は沈むが、株は沈まない」。記事
  11. KABU気「本間宗久とは何者か|相場は『気』で動く」記事/「ジェシー・リバモアとは何者か|群衆の心理を読んだ伝説の相場師」記事/「W・D・ギャンとは何者か|時間と価格を支配した伝説の相場師」記事/「レジェンドたちの目とは|3人の相場師で相場を立体的に読む」記事
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本記事には一部アフィリエイトリンクを含みます(Amazonアソシエイト)。本記事は歴史上の人物・投資家に関する情報提供を目的としたものであり、記載している投資手法・格言は各人物の考え方を紹介するものであって、特定の投資行動・商品購入を推奨するものではありません。「伝説の相場師ランキング」の順位・人選は、本記事の出典に記載の外部サイト(アテル投資顧問を参照元とする掲載)によるものであり、KABU気が独自に検証・確定した評価ではありません。掲載している経歴・実績は、2026年9月時点で確認できた公開情報に基づくものです。投資には元本割れのリスクがあります。実際の投資判断はご自身の責任において行ってください。
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